【拓海視点】




「Bye・・・」


ロンドン支社長との電話を早々に終えると、そのまま受話器を元に戻した。



時間を気にしているせいで、視線は自然に腕時計へと向いてしまう。




「遅い・・・」


ポツリと呟いてしまうほど、予想以上に時間が過ぎていたのだ。




“私はヒマですし、行って来ます!”



そう言って出て行った蘭が、2時間以上過ぎても戻らない・・・




荷物整理にしても…、幾らなんでも遅すぎるだろう?




先ほど置いたばかりの受話器に、また手が伸びて内線を掛けた。





「祐史、悪い・・・

秘書課に行って、蘭を見てきてくれないか?」



部長室で仕事をする祐史に、手っ取り早く頼むことにした。



俺が簡単に動いたりすれば、善からぬウワサが立つだけだ…。




「は…、オマエ、社長室から出したのかよ!?」


「いや、蘭が飛び出して行ったんだよ…」


「マジかよ・・・」


そう溜め息をついて呆れてられても、仕方が無い・・・