刻々と変わるデジタル表示が、地上への到着をカウントしている。



また愁然に晒されるまで、あと少しだと…――




やっと貴方と幸せになれる処にいるのに、どうしてだろう…。




どうして私は…、逃げようとしているの・・・?





視界をゆらゆらと揺らすモノを、メイクの崩れを気にしつつ拭った。



公然で泣いていてはダメだと、いつか言われた事が脳裏を過ぎったのだ。




無能で役立たずな私が出来るのは、今はコレだけだから・・・





到着を告げる音のあとで、スーッとエレベーターの扉が開いた。



ロビーを駆け抜けようとしたのが、さらなる選択ミスだったらしい。



コツコツと響き渡るヒール音が、今日だけは恨めしく思えた…。





“あっ、佐々木さんだ!”



“アノ社長を靡かせたらしいし…、ヤってみてぇよな”




「っ・・・」


周りに気づかれてしまった私への反応は、想像以上のモノで…。




居合わせた社員から向けられるのは、好奇の眼と冷ややかな眼。



耳に届いてくるのは、あまりにも居た堪れない言葉の数々…。