故郷にて。

 まだまだ残暑厳しく、母親の声とセミの鳴き声が頭に響く。

 エアコンが設置されていない部屋でそれを遮ることもできず、俺はだらしなく扇風機の前に座った。

 少年時代を過ごした俺の部屋。

 手は付けられていないらしく、春休みに帰郷したときのまま床とベッド以外は掃除もされていない。

 扇風機の頭を下に向けて寝転がると、ホコリを被っている卒業アルバムが目に入った。

 高校のアルバムを取り出すと予想以上にホコリが舞う。

 それを拭おうとティッシュを一枚引き出せば、ティッシュからさえ軽くホコリが舞った。

 クラスのページを開く。

 三年前の俺は、今より髪が短くて、黒くて、冴えなかった。

 東京に染まってすっかり垢抜けたなと自分でも思う。

 視線を一つ右にずらすと、当時の真紀も写っている。

 同じく髪は短く、黒く、ついでに肌も黒い。

 しかし、髪型が変わっても、肌の色が落ち着いても、化粧をしても、笑顔はこの時と変わっていなかった。

 他の写真を見ると体育祭で真紀が一番にゴールしている写真があった。

 一方で、マラソン大会で情けない顔をして走っている俺の写真もあった。

 この当時は、まさか一月も一緒に生活するなんて、夢にも思っていなかったな。