その日、勇樹は私の家に泊まった。


あの姿で元妻のいる家には、到底帰ることができなかったからだ。


元妻には、仕事でトラブって帰れないと、勇樹は簡単にメールで知らせた。



「…なぁ、美凪…倖田來未の“奇跡”って歌、知ってる?」

暗くした部屋のベッドに二人して横になった時、勇樹がふいに言った。


「あぁ…うん、知ってる。あたし、あれ好き」


「俺も好き」


「うん…」


「俺達にもさ、奇跡が起こるといいな」


勇樹が私の方を向き、そっと抱きしめた。


「うん、そうだね」


「絶対あるよ!奇跡…
俺は信じる」


勇樹の腕に力がこもった。

私が堪えきれず涙を流すと、勇樹は頭を撫でながら

「奇跡、起きるように祈ろ?絶対起きるから」

何度もそう呟いた。



私は久しぶりに勇樹のぬくもりを感じながら眠った。