周囲はザワつき始め、あたしたち自身も唖然としていた。


そもそも今の内容は、こんなところで明かしていいものなのか……。


有栖川グループトップの交代となれば、マスコミを通して記者会見を開かなければならないほど、日本経済界に影響を及ぼす重大なニュースだ。


「皆さん、悠河は既に有栖川グループを背負って立つ準備が整っています。光姫さんのような優秀なパートナーもいる。どうかこの場で承認頂けないでしょうか?」


その瞬間、会場中から大きな拍手と歓声が沸き起こった。


それに応えるように社長が立ち上がり、深々と頭を下げる。


慌ててあたしも席を立ち、社長に合わせて深く頭を下げた。


とうとう社長が……。


そう感極まった瞬間、会長が天邪鬼に変わる。


「ただし、条件が1つ」


「「え?」」


再び会場に静寂が訪れ、あたしと社長も会長を目で追った。