今さらだけれど、どう見てもマズい状況でしょう…?



ガチャッ――

間髪いれずに開けられたドアを、ただジッと凝視していた私。



すると、そのままスッと入室して来た人物に眼を奪われた。




バタンッ――

音を立てて閉まった重厚な扉が、再び密室空間を作り上げる。



私たちに新たな人物を加えた、社長室へと・・・




こちらに視線が注がれていても、拓海は一向に離してくれない。



かく言う私は、恥ずかしさで顔を上げられないままだけれど…。




「お前…、見境無しか?」


「ご明瞭…――

と言っても、“蘭に”だけど…?」


「ッ・・・」


自嘲した拓海に、さらにギュッと抱き寄せられてしまって。



仕事だと忘れてしまうほどに、鼓動は激しさを増していく。




「うわっ、俺の想像以上かよ…」


「最大の賞賛だな」


「ハハ・・・」


淡々と交わしつつも、最後は呆れたような声色が部屋に響いた。