「光姫、今日の会議の開始時間を1時間早めるよう調整してくれ」


朝、社長室に向かうため社長専用エレベーターに乗り込んだ途端、社長が口を開いた。


「社長。会社では葉山とお呼び下さい」


「2人の時は構わないと言ったろう」


「光姫と呼ぶのに慣れてしまえば、他の誰かの前でもそう呼んでしまう危険があります。
そうすれば大変な騒ぎになりますよ?」


社長は最近、公私混同しすぎているような気がする。


あたしへの愛情表現は嬉しいけれど、それを所構わず態度や言葉で表す。


一体、いつどこで誰が聞き耳を立てているか分からないというのに。


「その時は結婚を公表すればいいだけのことだろう」


「……そんな簡単に言わないで下さい」