まだ夕日が沈みかけるには早い、仕事もラストスパートの時間帯。


仕事の鬼が最も多忙を極め、忙殺される頃合いなのに。



どうして、こんな所で佇んでいるの?


自宅の外壁に凭れ掛かり、ポーカーフェイスでこちらを捉えていて。


考えの伝わらない表情は、悲しみだけを募らせる・・・




「っ――!」

するとブラウンの瞳と視線が重なり、途端に息苦しさを覚えた。


決して逸らすコトの出来ない、芯の強い眼差しに心が引き寄せられる。



「ッ・・・」

何処までも際限なく、貴方への想いだけが募っていく。



ドクン、ドクンと、高鳴り始める鼓動のままに赴きたい。


拓海の許へと駆け寄って、ギュッと抱きついてしまいたい。


心から愛してるって、伝えたいの・・・



我を忘れて、車のドアに手を掛けようとしたトキ――




「今さら彼に、何を言うつもりだ?」


「ッ――!」

背後の存在を忘れ去るほど、前方に夢中だった中で。


恐る恐る向き直った私を捉えるのは、酷く冷徹な瞳。




「ウソつきの彼に、また傷つけられにでも行くのか?」


「っ、そ…んな・・・」


薄笑いによって、惨い現実を思い起こさせられてしまう。