そのフレーズで、頭をガンと殴られたような衝撃が走った。
言葉を返す以前に、呼吸さえ上手く出来なくなっていく。
「雅貴からね・・・
貴方と一度、会って欲しいとお願いされたの」
混乱する私などお構いなしで、ニコリと微笑む女性。
後藤社長と彼女は、知り合いなの――?
アーモンド形の瞳と薄めの唇が際立つ、印象的な顔立ちで。
可愛いという賛辞より、美人とか綺麗が当てはまる女性。
ネイビーのシフォンワンピースは、色白さを一層際立たせていて。
ふわりと揺れ動く巻き髪からは、本妻の余裕さえ感じられた。
華やぐ雰囲気を引き連れて、こちらへと歩を進める2人。
距離が縮まる度に、バクバクと鼓動を早める心音。
この強力な波風に、攫われてしまいそう――
「蘭…、佳奈子と俺は君たちと同じなんだ。
“ただの幼馴染み”だから――」
余裕有り気に笑みを零し、説明口調で話す彼。
後藤社長と婚約者は、私と対峙する形でソファへ座った。
「っ・・・」
辛辣な言葉が、グサリと心に突き刺さったまま。
何かの針を刻む音が、体内で木霊し始めた・・・