貴方から貰った愛証を、蔑ろにしたくナイ――



社長のデスクへと歩み寄ると、あるモノを手に取った。


異彩を放つソレは、苦しみの始まりとなったモノ。



キラキラと輝く金剛石は、無の空間で異様に煌いていて。


この場に不釣合いに思えて、まったく綺麗に感じられない。



社長室に放置していたカバンから、お目当てのモノを探った。



「…あった・・・」

カバンの奥底で見つけたソレに、リングを沈めておいた。



ベロア生地の上で輝くリングが、あるべき場所に置けた気がして。


その輝きをジッと凝視していると、力が抜けてしまう。



再び填めずに済んだという、安堵感に包まれたのもあるけれど。


コレを通して、後藤社長の存在がチラつく恐怖もあったから。


行き場を失くさせて…、本当に可哀想なリングだと思う。



だけれど手錠という代名詞の通りに、喜びなど微塵も感じない。


エンゲージリングなのに、負のオーラを纏わせてしまったね。



私なんかに、選び出されたばかりに・・・




「拓海…、行って来ます…」



バタンッ――

秘密の部屋に語り掛けると、決意を胸に社長室をあとにした。