「オレと結婚すれば、これからも噂をもみ消してやるよ。今まで通り男遊びでも何でもすればいい」


こんなに見下されて、何か言い返したいのに。


あたしのプライベートは社長の言う通りだ……。


だから何も反論することなんてできない。


悔しいけれど……。



「分かった。……結婚する」


あたしはこう答えることしか選択肢が残されていなかった。


「最初から素直に受けていれば、惨めな思いをしなくて済んだのに」

「……」


あたしのことなんて何も知らないくせに。


あたしがこんな女になった理由も……。


「これから宜しくな?奥さん」


差し出された手を無視して、精一杯の抵抗をして見せた。



「なってあげるわ、あなたの妻に。そんなにあたしと結婚したいなら」


社長はフッと笑い、差し出した手をあたしの後頭部に回してグッと引き寄せた。



「上等だ。お前からオレを欲しがるようにしてやるよ」



こうして始まった。


あたしたちの偽りの結婚生活が――……