――お母さんは少し神経質だから――



父は いつも そう言って


見て見ぬふりを通した




母は ぼくには優しく

むしろ甘いくらいだった


蕾にだけ


母は蕾にだけ


鬼だった






8年ぶりに見た蕾の寝顔に



過去が一気に溢れて



ぼくを飲み込もうとする





ぼくは小さな蕾に



何度も何度も




大丈夫、大丈夫と言って




大丈夫とは 一体 誰に言っていたのだろう




虐待を受ける蕾に?



それとも




同じ兄妹でありながら




母に愛され 可愛がられ




幸せに育つ自分自身に




大丈夫、大丈夫




ぼくは出来る限り蕾を守ってる




大丈夫、大丈夫




蕾を守れていると





自分に言いきかせるために?