言われてから窓から見える景色を見る。まだ殆どの人が登校していないから、

誰もいない外。感じる風も皆がいる時よりも全然違うもののように感じる。

それはまるで別世界。桜太君はこの別世界を独り占めにしたかったんだろうな。

分からないでもないかもしれない。とっておきの場所は誰にも知られたくないからね。


「で、何か用か? あのジジイの事もないし、俺にはもう用はないだろ?」


ううん、あるよ。あたしは何も言わずに首を横に振る。

とびっきりの用事があるの。いざとなるとやっぱり緊張するなあ……

見えないようにかけてきた指輪を服越しに握りしめて、玄一さんから勇気を貰う。

大丈夫。今のあたしなら言える。落ち着け、落ち着け、落ち着け。

………………よし、落ち着いた。


「桜太君、あのね。あたし……」

「ああ?」

「貴方の隣にずっといても良いですか?」