「普通だよ。うまくないって」


照れる先生は、少し伸びた自分のあごのひげに触れた。



結婚式から1週間後の今日、私と先生は新婚旅行へと旅立つ。


今は、新婚旅行の行きの飛行機の中。




先生の仕事の都合もあって、少し短めだけど3泊で、行き先はグアム。



飛行機の苦手な私は、離陸の時にまた奇声を発した。


修学旅行の機内で、変な声を上げたことを思い出す。



「あの時は、心配したんだから。本当は隣でお前の手を握っててやりたかった」


先生は後ろの方の席から、前方に座る私を見ていてくれたんだよね。


「先生覚えてる?私が緊張してトイレに行った時に来てくれたよね。新婚旅行の時は俺が手を握っててやるって言ってくれたんだよ」



その約束通り、先生は今日ずっと手を握ってくれていた。



奇声は上げたけど、全然怖くなかったんだ。



「ありがとね。先生……」