……まったく、腹が立つ。
 

彼女は、眉をしかめて息を吐いた。

白いのは、煙草の煙の所為だ。
 

今まで、ずっと私に従って来た子だっていうのに……。
 

紅原綾子こと緒方義子は、目の前で正座をしている両親を、

忌々しそうに見やった。

これで、何度目になるだろうか。

しかし二人は口を噤んだまま、時間だけが流れる。
 

約束の日に、この家に奈央を迎えに来た時、

彼女はいなくなっていた。