だけど十郎さんは、ふっといつもの笑みを浮かべると、
「別に……大した事じゃないんですよ。
さあ、このままじゃ冷めちゃいますから。
……いただきます」
きちんと手を合わせて、綺麗な箸使いで食事を始めた。
はぐらかされた、と思った。
だけど、それ以上は追えない。
追っちゃいけない。
知りたいという意識の奥で、警報が鳴っていた。
危険、危険、もう近付くな……。
私は、曖昧に笑いながら、もそもそと食べ始めた。
どうしてだろう。
ミエロに邪魔された所為だろうか。
何か、調味料が足りなかっただろうか。
それとも、心の問題なのだろうか。
いつもよりご飯がおいしくないのは……。