私たちはまずは夕食をとることにした。一口食べ、味覚が戻っていることにほっとする。


「…人嫌いなんだと思ってたわ」

「吸血鬼のことか?」

「そう。だけど、昔は人と付き合いがあったみたいだから」


ルーは食べる手を止め、考え込む。器用にフォークをくるりと回した。


「逆かな。…多分」

「逆?」

「あいつぐらい人を好きな吸血鬼はいない。…多分」

「そ、そうなの」


だとしたら、吸血鬼というのはよほどの人間嫌いな者たちばかりなんだろうか。


「でも、あいつが人の子と付き合いがあったのは、俺が知らないぐらい昔のことだから。

久々に訪れた客人は、突然銀のナイフで切り付けてきたりするしなぁ。だから、多分」


…遠回しに私のことを言っている。下を向いて小さくなる私を、ルーは笑い飛ばした。


ルーが知らないぐらいの昔、人と交流があった吸血鬼。

ルーが知らない。

ルーが。


「ちょっと待って、あなた今何歳なの?」


どう見ても、ルーは人間の少年だ。だけどまるで、随分昔からこの館にいたような言い方をしている。


「え、俺十四歳だけど」


何を突然そんなことをとでも、言いたげだ。


「…そうよね」


予想と違わない答えに私は胸を撫で下ろす。


「まあ、人間だったのは、だけど」