その時、彼が意を決したように言った。 「……嫌だったら、言って下さいね」 突然手が頬を離れたかと思うと、するりとその手は背中に流れた。 気が付いたら、抱き寄せられていた。 一旦、思考が麻痺する。 「自分を守る為の、心の鉄格子が壊れて…… 不安でどうしようも無い時、 僕なら思うんです。 誰かに抱き締められたい、って。 そうして貰えないと、乾いた粘土みたいにどこまでも、 崩れて行きそうだから……」