大学に入ってからも俺は女を好きになることはなかった。サークル、バイト、コンパでいろいろな女の子に会うが、好きになることはできなかった。

ナオコのことが頭を支配していた。

電話すれば話すことはできる。ただ…
彼女に対してなんて声をかければよいのかわからない。しかし、もう一度会って、もう一度話をしないと前に進めないことはわかっていた。

そして大学一年の夏休み。

実家に帰ったときにナオコに連絡をとり、一度話をしよう。そう決めていた。

勇気を振り絞り、久しぶりにナオコにTELをかけた。

しかし、「この電話番号は現在使われておりません。」

と告げられた…。

俺に新しい電話番号を連絡する義理はない。
ただ、どうにも悲しくて仕方がなかった。
彼氏彼女ではないがお前は俺にとって今でも特別なのに、お前にとって俺は、どうでもいい存在なんだよね。

わかってはいたが、その温度差に悲しみを感じた。

このときの俺は、もう止まることができなかった。

直接家まで行こう。

ナオコの家は隣町だ。

車で20分くらいだ。親の車を借りて向かった。


着いたときには、もう夜になっていた。


ナオコの家から少し離れたツタヤに車を止めて、そこから歩いてナオコの家に向かった。
会って、俺は今でもお前のことが好きだという気持ちを伝えよう、そして俺ともう一回付き合ってほしいと伝えよう。

ナオコの家の前についた。
インタフォンを押した。

ピンポーン

「はい、どちら様でしょうか?」
お母さんらしき人の声が聞こえた。


「三上といいます。ナオコさんの高校時代の友達です。ナオコさんはいらっしゃいますか?」
俺は尋ねた。

しかし…全く予想しなかった答えが返ってきたのだった。

「ナオコは死にました。」