不安はあるけど、静かに寝ててくれるんだったら、それ幸い。



そう思ってミステリーの続きを読み始め、三十分。


微動だにせず寝ていた鬼虎が、突如くしゃみを二回した。



悩む、正直迷う。



まだまだ気温は高いのだから、くしゃみの原因は単に鼻がむず痒かっただけかもしれない。


でも身体を冷やして、風邪を引かれてしまったら余計にめんどい、病院とか行けないし。



しかも物語はちょうどクライマックス、読み切りたい。



考えて、五秒。



三回目のくしゃみを聞いて、私は二階にタオルケットを取りに上がった。


兄の部屋に行けば、昨夜使っていたやつがあるだろうと、勝手にドアを開けゲット。


そのまま真っ直ぐ茶の間に帰る途中、不意に兄がパスタを作りながら言っていた言葉を思い出した。



『虎さ、食事が豪華過ぎて困るんだって』



それを聞かされたときは不思議だった、質素で不満な場合はわかるけど、豪華過ぎて不満って。


だから『贅沢な悩みだ』って言ったら。