「誰か…いるのか…」
吹雪に紛れて洞窟の奥から、かすれた男の声が聞こえる。
吸血鬼は構わず、洞窟の中へと入っていった。
私も慌ててその後ろに続く。
「誰の許可を得て、こんなことをしている」
静かな吸血鬼の問いかけに見知らぬ男が振り返った。
目は血走り、口から鋭い牙が覗く。
物語に出て来る吸血鬼そのものの姿だ。
私は恐怖と嫌悪で目を逸らし、焚火の奥を見る。
そこには、数人の少女が倒れていた。
少女の中に、ぐったりとしたレイシャの姿があった。
「レイシャ!!」
私は叫び、レイシャに駆け寄ろうとする。
吸血鬼が阻むように私の腕を乱暴に掴んだ。
「待て、迂闊に近寄るな」
「だけど、レイシャが!」
「助けたいのだったら、大人しくしていろ」
強い力で吸血鬼の後ろへ引き戻さる。
あそこに、レイシャがいるのに…!
私はもどかしさでいっぱいになった。
「なんだお前たちは…俺を殺しに来たのか…」
喋る度に男の口からよだれが落ちる。
男は尖った爪を威嚇するように青い髪の吸血鬼に向けた。