それでも承諾したのは私で、佐々木の娘に拒否権の余地はナイ。



東条家に仕えて来た、佐々木の人間には一生・・・



だけれど私には、名前を捨てて逃げるなんて許されない。



感情を持っているコト自体が、おかしいのだから…。





「はぁ…、よし!」


迷いを払拭すように喝を入れて、ドアからおでこを離したあと。



「失礼します――」


ガチャッ――

その重厚なドアを今度はノックして、ゆっくりと扉を開いた。




ドアの向こうにはアノ笑顔を捉えて、途端にドクッと高鳴る鼓動。




「蘭、遅いぞ――?」


爽やかなネクタイに手を掛けて少し緩めつつ、席を立った社長。



「ごめんね、拓海…」


彼とのキョリを縮めようと歩を進めて、ごく自然な笑顔を振りまく私。




この瞬間から、幼馴染みとしての“私”の演技がスタートする。



主役女優になりきって、これがゲームなのだと思う外ない。




未来など用意されナイ、貴方との密事を受け入れるためには・・・