「え…あんたもしかして人の子?」


少年の言葉に私はとりあえず頷いた。

「…人の子がなんでここに?」


「きゅ、吸血鬼に会いに!」

「ふーん?」

少年は不思議そうに首を傾げる。

「ま、いっか。なら入れよ」


何か言いたげな様子だったが、あっさりと少年は館の中へ私を招き入れる。

拍子抜けする呆気なさだ。


私は館の中へ入ると、体に積もった雪を払い落とす。

隣で少年がランプに火を点していた。



「あなた、吸血鬼なの…?」

まるっきり普通の少年に見える。



「俺は違う」


少年は首を振った。

私はこっそり胸を撫で下ろす。


でも、「俺は」違うのなら、「誰が」そうなんだろう。


私の疑問に気付いたのか、少年は意味深に笑った。


…用心しなくちゃいけない。


館の中は暗く、さらわれた子たちがいるようには思えないほど静かだった。



もしかしてもう…、そんな嫌な予感を私は頭から振り払う。