「あー、考えたってわかるもんか」



再び湯船に耳まで浸かろうと腰を沈める。


唇が少し温めのお湯に触れたとき、ふっと今日の神社での出来事が頭をよぎった。



あの感触を思い出してしまって、呼吸を止める。


お湯のせいではなく、顔に血が昇ってゆくのがわかる。



その記憶も感触も忘れたくて、ざぶん、と一気に頭のてっぺんまでお湯に浸した。


温い液体が全身を包む、それは刺激で、情け。


解放されるのはほんの一時だけ。


大きくない浴槽は私が窮屈なところにいるのをよく教えてくれる。



「なっさけない! 私!」



勢いよく立ち上がり、自分を鼓舞する。


湯気のこもった空気が肌にまとわりついて、喉を通って現実に引き戻してくれる。