そんなことはどうでもよく、お客様用の湯呑を一つ取り出して麦茶を注ぐ。


ついでに冷蔵庫にあった水羊羹を取り出し、包丁で二つばかり切る。



……水羊羹って戦国時代あったのかな、って認めたわけではないけれど。



まあいいや、他にちょうどいい和菓子はないし、と湯呑と小皿をお盆に載せて客間へと向かった。



エアコンなんて便利なものなんかないせいで、南の廊下の窓は全部網戸。


アブラゼミの鳴き声が、絶えることなく続いている。



「お待たせしました」



戸を開けて入ると、継虎さんはさっきと寸分違わぬ姿勢で待っていた。


疲れないのか、不思議。



「はい、どうぞ。淹れなおしてきましたから……わっ」



お盆から湯呑と羊羹をテーブルに移し終えたところで、その手が私の顔を包んだ。