“自分で決めたこと”


――だったらどうして、
そんなにうなだれているんだろう。


どうして、そんなに震えている?

どうして、
どうして風俗で働こうだなんて――



「借金のためか?」



おそるおそる、けれど確かめるように口にした。


「さっさと返してしまいたいから、風俗に行くことを決めたのか?」


桜子は、何も言わなかった。


ただ床にぺたりと座り込んで、

長い髪で顔を隠すように、いつまでも深くうつむいていた。


沈黙が、僕の放った言葉を真実に変えてゆく。



裏切られた、と思った。


彼女の行動に口出しする権利なんか、誰にもないのに。

風俗で働くことを否定する権利なんか、僕にはないのに。



借金のために働き始める女の子は多い。

懸命に踏ん張って生きている彼女らを、立派だと思う。


なのに、じゃあどうして僕は、桜子がそうすることを許せない?


こらえようのない憤りの意味が僕にはわからずに、

ただ彼女に裏切られたのだと、そう思った。