「お嬢様の生活の補佐をするのが、私の務めですから」

「ああ。一つ言っておきたい事が」

「何でしょう?」

 昨日の話を蒸し返されるのかと身構えたが、絵理の口から出たのは別の言葉だった。

「私のことを『お嬢様』と呼ぶのは控えてもらえないだろうか。普通名詞で呼ばれるのは好かぬ」

「かしこまりました。では『絵理様』と呼ばせていただきますね」

「私としては敬称など付けずとも、一向に構わないのだがな。昨日が陣の素であろう? 無理に恭しい態度をせずとも、あれで構わぬ。
 もっとも、他の皆の手前、そうは言ってられぬのだろうが」

 オレは思わず苦笑した。絵理は自分が何を言ってるのか解ってるのだろうか。