「……あにすんだよ?」

「な、なにするんだじゃな……ないでしょ!!? 要こそ何すんのよ!!」

「……チッ」



舌打ち……聞こえてるから。

真っ赤になったあたしなんかお構いなしって感じで要は立ち上がった。

思わず身構えるあたしを少し面倒臭そうに見下ろすと、なんだかバツの悪そうに首をポリポリと掻いた。



……?

なによ、今度はなに言う気?



キッと睨みつけるように、あたしは警戒を解かない。



「…………」



自分でも気がついていた。
強がってみても、体は震えていることに。


要はそんなあたしをじっと見つめて、それから大きく溜息をついた。



「……ごめん」

「……な、なに言って……え?」



てっきりバカにするような言葉が降ってくると思っていたあたしは、呆気にとられて要を見上げた。



「震えてんじゃん。 怖がらせて……ごめんって言ってんの」

「……えぇ? あ……う、うん」



拍子抜け。
謝られるとよけい照れるんですけど。



なんだかギクシャクしたまま。



「なんか腹減ったなぁ、なんか食おうぜ」

「……うん」



それから、要は何事もなかったかのように笑い、あたしもなるべくそれに答える。
まるで、忘れようとしているみたいに。


なによ、意味わかんない。



――――――――……
――――……


カチカチカチ…

目を開けると、眩しい光が少しだけ開いたカーテンの隙間から差し込んでいる。


「……」


時計に目をやると針は11時半をさしていた。

もうお昼かぁ。
昨日はあれからモヤモヤと考え事してて結局寝たのは夜明け頃だった。



「…………」



外から要の声がする。
いつもは起こしてくれなんて言うくせに、今日はちゃんと自分で起きてるんだ。


ぼんやりとそんな事を考えながら、あたしは重たい体を起こした。




あ、れ?

下から聞こえる声に、微かに要とは違う声質がある。
誰か来てるんだ。

のそのそと窓際に行ってカーテンの隙間から玄関の方を覗き込んだ。


「……」