私の予想にもしなかった彼の言葉に私は驚いた。



「どうしてですか?」



そう私が訊ねると、

彼は一瞬真剣な目つきになって私を見つめた。


その一瞬、
私には彼の瞳が銀色に光って見えた。


私は目をこすってもう一度彼の瞳を見るけれど、銀色には光ってはいなかった。



彼はそんな私の仕草を、
気にしていないようにいつもの笑みを浮かべていた。



「それは貴方自身がご存知なはずです」


「私……?」



ふと、私の脳裏に一人の男性が映し出される。


もしかしたら、彼は高藤さんのことを言っているのだろうか。


どうして彼が?



「何故そのことを?」


「この街では誰もが知っていることですよ」



私は身分が一つ上で彼は一つ下、と言うことを痛感させられる。


私にとっても彼にとってもその段差は変わることはなくて、


本当は私が言えることではないのに、言ってしまう自分がいた。



「そんなことないですよ。
いつでも会えますよ、会いたいと思えば」



本当は、会わせてもらえないかもしれない、と思った。


私が見ず知らずの男性と頻繁に会っているのなんか知られたら親は間違いなく気を悪くする。


それどころか、
二度と会わせてもらえないかもしれない。


そんなことを考えたら、こんな身分に生まれた自分が嫌になった。