「…言うの?」


「あ、恋」


振り返ると、そこには恋がいた。


「うん、今はまだ無理だけど…。 そのうち言うよ」


「一番、言いたくない事…なんでわざわざ言うの?」


「うーん、なんでだろう」



私が腕を組んでうーん、と唸る。


「淳も足利さんも沢尻くんも、いい奴だよ。 愛が一番よく分かってる事だと思うけど」


「…うん」


「だから、俺は話してもいいと思う」


「そうだよね」


私が笑うと、恋も少し笑った。


「ま、なんかあったら相談してよ」


「うん、分かった。 あ、ちょっとトイレに行ってくるね!」


私は授業が始まる前に、トイレに行くことにした。


用を足して手を洗っていると、そこには同じクラスの佐藤さんが居た。
あの、王子親衛隊?の子、だっけ?


「主井さんの中学って、戸川中学だよね?」


「…え?」


イキナリ何を言い出すのかと思ったら、私の出身中学…なんで知ってるの?


「同じ年のいとこが、そこの中学に通ってたの。 このあいだ、卒業アルバム見せてもらったんだー」


「そ、そうなんだ…」


どうしよう…。
知られちゃった…のかな。


私は冷汗をタラリ、と流す。


その時、予礼のチャイムが鳴った。
私は逃げるように教室に戻った。


席に着いて、拳をギュッと握る。


「どうしたの?」


変態がこっちを覗き込むように見る。


「なんでもないよ」


そう言って、教科書を出す。どうしよう…バレちゃったのかな。


でも、卒業アルバムを見ただけかも知れないし。
その日は、授業に集中できないでいた。