桃色の花弁が、まるで燃えるような輝きを放っている

 「正確に申しますと、私は木ではございません。古の時より魂を吹き込みました」

 「魂を?…何故?」

 「いつか、私達を救ってくださる方が現れる事を信じて…ずっと待っておりました」

 「それが、私な…わけ?」

 「さようでございます。お力添えして頂けますか?」

 「って言われても、私何処にでもいる女学生よ」

 「都でお待ちしております」

 紅梅の燃えるような輝きは消え、静かな空気に戻る。

 夢…でも見ていたのかしら?



 「ただいま~」

 「あら、お帰り 遅かったのね ねぇ、その手に付いてるの見せて♪」

 「えっ!?」

 見ると覚えのない花輪

 じゃ、やっぱりさっきのは…

 夢ではない証拠にいつの間にか紅梅で編まれたものが腕に付けられている。

 璃花と楽しく勉強会してたのが、ずっと昔の事のように思える。

 ついさっきの事なのに

 彩希が作ってくれた食事を囲んでいるのに、頭の中はあの声の事でいっぱい。

 「卒業を前だってのに、随分沈んでるんじゃない?」

 「そんな事ないよ、ちょっと考え事」

 「それならいいけど、食べる時は考え事はお仕舞いね」

 「ごめん。」

 私は、彩希と二人食卓を囲む。

 紹介が遅れたわね。彩希とは私を産んでくれた人。

 つまり母親なんだけど、歳の差が17しかないのよ。

 小さい頃から名前で呼んでたし、今さらママも変でしょ?