ザワザワザワ……

ザワ…

「なにかしら、急に…。気味が悪いわ」

あたしはぞわりと鳥肌のたった腕を抱き、身をすくめてあたりを見回した。

幾重にも茂る黒い葉の木々は、太陽を遮っていて、森の中は夜のように暗い。

時折、

ホーゥ、ホーゥ、、

と、不気味な鳥の鳴き声がこだまする。

「道、間違えたかしら……」

あたしは不安でしょうがなかった。

あたしは病床の母に頼まれて、隣の村まで林檎を買いに行く途中だった。

この森を避けて、迂回するのがなんとなく癪で、通り抜けてしまおうとしたのだった。

まっすぐ歩けば抜けられるはずだった。

それなのに、どうしてだか、歩いても歩いても、森は途切れる様子を見せなかった。

道も方向も分からなくなってしまった、困ったぞ、とうろうろしているうちに、日も陰ってきて、今にいたるのである。