「ハハハ!」

一通り笑ってから、兜は言った。


「心配するな。今、送ったから」
「ぎゃあああ!」

兜とレッドの声が、重なった。


電話をかけていたレッドに向かって、天から何かが突っ込んで来たと思ったら、

月影号だった。


月影号は、右翼でレッドのスカートを引っ掻けると、そのまま…また、天へと舞い上がった。


「ま、またかい!」

いつもの如く、パンツを見せながら、あたしは空を飛んでいく。


公衆電話から、残高がゼロになったテレホンカードが、差し込み口から、虚しく飛び出していた。



「ど、どうして!」

あたしはムーンエナジーで、体を覆うと、右翼に引っ掛かっていたスカートを、風の抵抗を受けながらも、何とか外した。

すると、月影号は、あたしを残して、前方に飛んでいった。

中に浮かぶあたしの眼下に、広がる地元の町並み。


猛スピードで落下して行くあたしの下に、Uターンして来た月影号が静止した。

空中で、ちゃんと運転席に乗り込むことができた。

月影号は、ロケットに羽をつけたような形をしている。


「行くわよ!」

あたしは、オートマ車と同じような仕組みをした月影号のシートに座ると、ハンドルを握った。


月影号に、行き先をプログラムする必要はない。

まるで、磁石のように乙女ソルジャーの発しているムーンエナジーに吸い寄せられ、

勝手に、乙女ソルジャーのもとへ飛んでいくのだ。


「これなら…安心」

あたしは慣れないハンドルを握りながら、ほおっと一息をついたのも束の間!

いきなり加速する月影号。

空を飛びながら、新幹線よりも速く…リニアモーター並みのスピードで飛んでいく。

「変身いてなかったら…死んでる!」

風よけがないから、もろに風圧が顔に当たった。


だけど、ムーンエナジーで顔をおおったから、もう余裕!

と、安心したあたしは、 突然月影号が進路を変えたことに気づいた。

「え!?うそお!」

ハンドルを切ろうにも、びくともしない。

車体が下へ向くと、そのまま…月影号は、着陸の体勢を取り始めた。

「ここじゃない!」