俺は墓参りに行った。


妻に謝るんじゃない。


妻は、俺が新しい恋をすることを望んでいるはずだから。



妻に相談だ。



風が吹き抜ける高台。


何度もひとりで泣いた場所。


病気で亡くなった妻を思い、この場所で唇を噛み締めた。



忘れるわけじゃない。


妻のことは一生愛しているし、忘れない。




でも、残された俺の人生を共に歩いてくれる人が、俺にはいない。




空から見守ってくれている妻に向かって呟く。



「やっと、見つけたで。お前も気に入ってくれるくらいええ子や」



カサブランカが揺れる。


俺はお墓の周りを掃除し、高台から街を見渡した。



「また来るわな」



死んだ後のことはわからない。



でも、俺は常に心の中にいる妻と生きてきた。




だから寂しくなかった。





でも

寂しかったんかもしれん。


寒かったんかもしれん。



やっぱり愛する人の温もりが欲しかったんかもしれへんな。




勇気をくれてありがとうな。




俺は、やっと見つけた2人目の運命の女性に愛してもらえるよう、頑張ろうと心に決めた。