あたしは、その旬の顔を見てきょとんとしてしまう。


え?
―――……なに?



だってそうだよね?
要の事出すなんて……。




「あー……」



旬は、ちらっとあたしの顔を見た。

そして、またグランドに目をやりながら言った。





「俺……桜井が好きだし」

「……」



へーえ。
そっか、そうなんだ。

――……ん?


なな、なんだって?



あたしは自分が今聞いた言葉が信じられずに眉間に皺を寄せて、旬を見た。



そのあたしの顔を見て、旬は「クッ」と笑うと、今度は真っ直ぐあたしを見つめて言った。





「俺は。 桜井未央さんが好きです」


「ええぇ!?」




はっきりと聞こえた言葉に、今度は驚きの声をあげてしまった。


だって、信じられないよ!


旬だよ?


旬があたしを好きなんて……!
大混乱のあたしに旬はさらに追い討ちをかけた。



「昨日、相田が桜井を呼び出したろ?
俺、あの時すげー焦ってて。桜井が取られるって思ってた。

……これは完璧、恋でしょ」


「……」



いや……
あのそんな爽やかな顔で“恋でしょ”って言われても……。


開いた口が塞がらない。
息をするのも精一杯。

なぜか楽しそうに笑う旬から目が逸らせない。




「……やべ。じゃ、俺行くから。また後でな」




そう言うと、旬は練習に戻って言った。
あたしは、何もかえす事が出来ず、旬のその背中を見送った。



う、うそ……旬が……





あたしを……好き?