「まあ、私のことは良いだろう。早速特訓しようか」

「まあ、はい」

 返事をしつつラケットを持ち、でもくすぶる疑問がまだ残っていたので聞いてみた。


「でもどうして特訓してくれるんですか? 昨日のお詫び、とか?」

 それなら納得するけれど、何だかそれだけじゃないような気がして……。


「まあ、もちろんお詫びの意味もあるけどね……」

 ラケットで球を台に軽く打ち付けながら話す月原さんは、ひと際高くなるよう打ち付けると反対側の手で落ちてきた球をパシッと取った。

 その目が、好戦的な光を宿している。


「“唯一”を賭けられた戦いなんて、吸血鬼としては負けられないだろう?」

 らんらんと輝く眼差しに、本気を感じた。


 もちろん負けるつもりなんかさらさらないけど、この特訓には覚悟が必要かもしれないと思った。