「羽花」


「は、はいぃぃぃっ」


「こっちおいで」


 私がうんうん悩んでいる間にソファーに移動したようで両腕を開いて私を誘ってくる。


 誘ってくる甘い蜜に吸い寄せられるように私は雷斗くんの腕の中に身体を収めた。両腕に抱きしめられるのはなんだか慣れない。ずっと左手だけだったから。


 情報を詰め込んで疲れた頭や身体が抱きしめられることによってかなり癒やされる。ハグをすると疲れがとれるってどこがで聞いたことがあるような気がしたけど本当だったんだなぁ。


「明日俺が羽花に似合うとびっきりのドレスを選んでやるからな」


「はい、ありがとうございます。雷斗くんはスーツは持っているんですか?」


「ん? 俺? 俺はネイビーのスーツがあるよ」


「そうなんですか」


 スーツ姿の雷斗くん、絶対に格好いいです。


「羽花」


「はい?」


「声に出てるよ。ったく、可愛すぎんだろ」


 困ったような顔でクイッと顎を持たれる。ほんの一瞬の出来事。


「え……んんっ……」


 顎を持っていた手はそのまま私の頭の後ろに滑り込み、髪の隙間に指を通す。なんだか身体から力が抜けていってしまうようで私は雷斗くんにしがみついた。頭がふわふわしているのに、身体はビリビリと痺れている。