「えへ、どう?切っちゃった…似合う?」

「にあ…似合わない事はないけど。 海鳳さんに小さな頃綺麗な黒髪だねって褒められて、それから一回も染めたりパーマもした事のない自慢の髪だったじゃない」

「もう、いいの。
それに髪の毛も染めてみたかったし、ばっさり切ったら案外すっきりしたよ」

そうなのだ、私は二十六年間一度も染めた事のなかった髪を、茶色に染めた。
そしてそのついでに肩より上までばっさりと切ってしまった。

海鳳を想って大切に伸ばしてきた髪だったから、切る時だってあなたの為だと決めていた。

きっと……長い黒髪じゃなくなった私を海鳳が見たら、更に私に興味を失くしちゃうんだろうな…。 元々興味なんか無かっただろうし…。

「それより今日は何で呼び出したの?心配しないでよ、愛莉。家なら決まりそうだし、明日不動産屋さんにいくアポも取ってるからね」

「ふぅん……マジでそれでいいわけ?」

「だって仕方がないしね。それにしても相変わらずお客さんのいないお店だわー…」