「子供はまだ?」とからかわれたりしたけれど、その質問には曖昧な笑いで返しておいた。  …だって私達の間に子供を授かる事はないのだから。

その日も海鳳とショッピングモールでデートをしていて、夜から早乙女家へとお呼ばれをしていた休日だった。

「わっ!危ない、大丈夫?」

人並みに押されて転びそうになった小さな子供に、海鳳は声を掛けた。
慌ててお母さんがやって来て、こちらに向かって何度もぺこぺこと頭を下げる。

「ありがとう、おじちゃん。」

顔を上げた男の子が純真な瞳をきらきらと向けて、お礼を言った。
海鳳はにこにこと笑っていたけれど、親子を見送った後私の方を向いて真剣な顔をした。

「俺っておじさん?」

その質問に思わず笑いが止まらなかった。 私の笑顔を見て、海鳳は困った様に頭を掻きながら笑う。