便箋に引かれた線の幅をいっぱいに使うほどの大きめの文字は、幼さがあるものの豪胆で整っている。書かれていたのは、季節の挨拶、パーティーで振る舞われた珍しいドリンクの感想などなど。それから。

【私の固有魔法の暴走によりティアベル嬢にご迷惑をお掛けしたことを、心より謝罪させていただきたい】

 読み進めていくうちに、私はやっと差出人に思い当たった。
 あの護衛騎士達に守られながら、涙をはらはらと零していた少年だ。涙する様子とは似つかぬ豪胆な文字に驚く。
 でも、私と年齢が近いように見えたのに、固有魔法って……?

 続きには【どうしても直接ティアベル嬢にお会いしたい。ディートグリム公爵家をご訪問させていただけないだろうか?】と書かれていた。

「どういうことでしょうか、私に直接会って謝罪をしたいと……?」
「ああ、そのようだな。ティアベルの好きにするといい。どうする?」

 銀灰色の長い髪をゆるく三つ編みにして、きっちりと宮廷魔術師団の軍服を着込んだお父様は、ティーカップを片手に切れ長の目元を細める。