これは……従者として主人へ信頼を寄せてくれている証し、なの、だろうか。……そうであったら、嬉しい。
 私もアルトバロンの信頼に応えたくて、彼の黒髪を優しく撫でる。


 いつか、アルトバロンの〝箱庭〟の風景が、平穏な日常と変わりのないものになりますように。
 私のせいで、彼をこの檻の世界へ逆戻りさせるようなことにはなりませんように。



 聖女様がこの世界へ来るまで――あと十年。