何も言わないでこんないい席に案内されるなんて常連という話は本当みたいね。


「白蘭。はじまるぞ」


劇はとても素晴らしいものだった。


俊敏な動きに合わせて美しい音楽と舞が披露される。


白蘭が目を輝かせて見入るのを月影は微笑んで見守った。


「今の見たっ!?月影、あの人すごいわね!」

「ああ、見ていた」

「あの楽器は何かしら」

「琴というものだ」


まるで子供のように、はしゃぐ白蘭はかつての月影と重なった。


劇が終わるといつものように肉を買い家に帰った。


そして次の日には薬の売り方を教わり回数を重ねるうちに一人でも売りに行けるようになった。


月影は過保護だからついて来ようとするけれど、私が毎回断る。