焦らずによく見れば、苦悶の表情も浮かべていない。……どうやら単に魔力切れを起こしているだけのようだった。
 アルトバロンは安堵とともに、いつの間にか詰めていた息を吐く。

(そう言えば、僕と主従契約を結んだ時も彼女は魔力切れを起こして倒れていたな。もしかしたらお嬢様は、自分の魔力量が底を尽きるのも考えずに魔法を使いすぎる傾向にあるのかもしれない)

 自分と同じく、生まれながらにして魔力量が多いのに加えて、彼女の場合はエルダーアップルの効能が如実に現れているのだろう。 
 多すぎる魔力を暴発させず、間違った呪文でも正しい魔法として放出する荒技をできるのだから凄い。

 さきほどの呪文も、確かに初級水魔法の呪文を詠唱していたのに、上級魔法を何人もの大人が打ち込んだかのようなあの威力が発揮されていた。まさに大人顔負けのイメージ力だ。

 対して、魔力消費量の計算は苦手らしいので心配になる。