「みんな船見くんに振り向いてもらうために、メークも頑張ってるもんねぇ」


咲子は関心した声色で言った。


「メークかぁ……」


全く関心がないわけじゃないけれど、メーク道具はあまり持っていなかった。


肌の日焼けを抑えたり、唇を荒れを治したりするための道具だと思っていたくらいだ。


「愛美もしてみる気になった?」


そう聞かれてあたしは顔を上げた。


ライバルたちは日に日に可愛くなって行っているような気がする。


それに比べてあたしは別になんの変化もない。


確かに、このままじゃダメな気がする。


「少しくらいなら」


おずおずと答えると、咲子の表情が明るくなった。


「そうこなくっちゃ! じゃあ、さっそくあたしがやってあげるから、トイレに行こう!」


「え、今?」


「当たり前でしょ!」


咲子はそう言うと、あたしの右手を掴んで強引に歩き出したのだった。