夕日が差す廊下を歩いていると、練くんが何かの歌を口ずさんでいるのに気付く。それは、私が好きだって前に話したアーティストの曲だ。

「練くん、その歌……」

「最愛が好きって言ってたから聴いてるんだ。いい歌詞だよな」

好きなものを共有してくれるって嬉しい。ふわふわと心が温かくなって、笑顔が自然と生まれる。

「嬉しい!」

笑顔で練くんを見上げると、練くんは「お前なぁ〜……」と耳まで赤くしながら顔を逸らす。

「練くん?」

突然顔を逸らされたから、何かしちゃったのかなって不安になる。でも、練くんは「何でもない!早く置いて帰るぞ!」と言って足を早める。

この時、練くんが心の中で「その笑顔はズルい。勘違いしそうだ」と呟いていたなんて、私は知るよしもなかった。