傑先輩は、メガネをかけていてかっこよくて、成績優秀な人。この軽音部ではベースを担当していて、口数が多い方ではないクールな人なんだけど、何故かその顔は今真っ赤だ。

「先輩、どうしたんですか?顔真っ赤ですし、熱でもあるんですか?」

私が近付こうとすると、先輩は「来なくていい!」と言いながらノートを握る。どうしてそんなに慌ててるんだろう?

「それより、今日移動する時に偶然お前見かけたけど、クラスメートの男子と距離近すぎんだろ。おまけにあんなに笑って……」

傑先輩が急に話を変えてきた。何でそんな距離感の話を?

「ただの友達ですよ!それより、他のみんなが来る前に部活の準備しときますね」

私は笑って部室の奥へと入る。ここには、みんなが使う楽器なんかがしまわれているんだ。

私は知らなかった。傑先輩がノートの隅に「村崎最愛」と書いていたことを……。それが原因で傑先輩は顔を真っ赤にさせていたということも……。