壁と俺の間でスッポリ挟まる小林さん。
その表情はどこか混乱しているのに決意があった。

あぁ。


「…森さん」


俺は振られる。


「その…ごめんなさい」
「…うん」
「私、今の婚約者が好きなんです」
「うん」
「本当に私の事を大切にしてくれてますし、今日だって迎えに来てもらう予定です」
「そっか…」
「だから、その…。本当にごめんなさい」
「…ううん、…むしろ」


・・・ありがとう。
俺を振ってくれて。

これで俺は前に進める。

初恋を終わらせることが出来る。


「森さん?」


どかない俺を不審に思ったのか、上目遣いでこちらを見てくる。
あぁ。本当に可愛いな。

最後に思い出だけもらってもいいかな?


「ありがとう。…これは思い出に貰っておくね」


そういって俺は森さんの額に口付けをした。