「ミレイナ!」
「あ、陛下」

 ミレイナはジェラールに気付くと、ふわりと笑う。ジェラールは足早にミレイナの元に歩み寄ると、ベッドサイドに膝をついてミレイナの手を握りしめた。

「随分と苦しそうだったが、なんともないか?」
「はい。想像以上に痛くてびっくりしましたが、ウサギ獣人は元々安産傾向が強いので」

 ミレイナはジェラールを安心させるかのように笑う。けれど、その表情には疲労の色が見え、ジェラールを心配させないようにしているのは明らかだ。

「ミレイナ、頑張ってくれてありがとう」

 手を握ったまま労るように額にキスをすると、ミレイナは嬉しそうにはにかむ。
 そのとき、背後から「ふぇ」とか細い泣き声がした。笑顔の助産師が白い布に包まれた赤ん坊を連れてくる。

「ミレイナ様、ジェラール陛下、元気な女の子です」

 助産師はミレイナの胸に抱かせるように赤ん坊を手渡してきた。ジェラールはこの赤ん坊を、覗き込む。