「もう一人は嫌だ……!」

そう言った刹那、猫がペロリと僕の塩っぱい頬を舐める。まるで「いいよ」と言ってくれているみたいに……。

顔を上げれば、夕焼けが街をオレンジに照らしていた。今まで何度も見た変わり映えのない空だ。でも、今日の夕焼けは今までで一番綺麗に感じる。それはきっとーーー。

「一緒に帰ろう」

猫を優しく抱き上げ、僕は猫に笑いかける。久しぶりに笑ったから、どこかぎこちない表情かもしれないけれど。

僕はようやく、孤独から解放されたんだ。