住んでる人数が少ない割に
家の中の広さには昨夜も驚いたけれど
今朝は今朝でガランとしすぎて返って怖い。

そして2人の姿が見当たらない。
今日は日曜だし
この時間ならいると思うから部屋にいるのもしれない。

「お腹すいたな…」

そう言えば昨日の昼から何も食べないままで
さすがに何か口にしたくなった私はキッチンへと足を進めると、先約が1人。

「貴方は確か…」

えっと、氷彗…くん?さん?
そもそも名前?苗字?
いいかげん名前を教えてもらわないと。

「…。」

一瞬、彼は私に視線を向けたけれど
何を言うわけでもなく”無”のまま
コーヒーメーカーのスイッチを押している。

か、絡みづらい…


淹れたてのコーヒーの香りが鼻を霞める。
朝の一杯…私も飲みたい。
が、言える雰囲気じゃないよ。相手が悪い。

しかし欲しそうな顔をしていたんだろう。
急に彼は私の方をチラッと向いて…

「…飲みます?」

どうやら察してくれたらしい。

「ぜ、ぜひ頂きたいです」

「…。」

答えたら答えたでまた無視。

かと思えば食器棚からカップを2つ用意し
注いだコーヒーをテーブルに置き
『どうぞ』と言わんばかりに目線を送ってくる。


やっぱりこの人は謎すぎる。

「お、お邪魔します…」

怖ず怖ずと用意してもらった席に座り
斜め前の席に彼も腰掛ける。